風が流れている。
風がオレの全身を愛撫する。 風ってのは偉大だ。 風が流れるから時間も流れるんだ。 オレは今、両方の流れに愛撫されてんだよなぁ。 ああイっちまいそうだ。 自由とは制約だ。 自由を何の制約もない世界だと考えてはならない。 もしそんな世界があるとすれば、自由すらない。 大衆が求める自由を得るには、自由という制約に縛られなければならない。 大衆が信じる自由とは、自由という制約内でのみ自在に活動できることを言うのだ。 射精の快感も空腹の苛立ちも睡眠の静けさも運動の息切れも流れる汗も勝利の歓喜も浸透する酒も歩く足も持つ手も見る目も聞く耳も生きるための空気も熱も土も水も空も圧力も分子も原子も生きることすらも価値がない。 疑うことも価値がないのに、なにをやってるんだろう、と問いかける。 価値にも価値がないのに、どうしたらいいんだろう、と問いかける。 問いかけるな、オレ。 あるべき姿など、オレは見たくないんだ。 今、初めて気づいた。 オレは落ちてるんだ、と。 スカイダイビングでパラシュートが開かなかった。 ああオレは死ぬんだなと判った。 今まで何度となくスカイダイビングをしたし、その何度となくというところに甘えがあったからこんなミスをしたんだろう。 だけど今はこれはこれで良かったとも思えるんだ。 落ちると言う事実を知っただけで十分の収穫だ。 オレはここから昇ることはできない。 乗っていた飛行機はもう米粒もない。 オレは今、落ちること、しかできない。 どれだけ強く願っても落ちることしかできないんだ。 とてつもなくでっかくて、オレなんかじゃどうしようもない落下だ。 別にオレは、自然は偉大だ、なんてことを語ってるんじゃない。 実際、オレはさっきまで空を飛んでいたんだ。 今地球は病んでいるという比喩があるが、それは人間の力だし、その程度で自然は絶滅するほどにしょぼいんだ。 今気づいたのはそんなことじゃない。 もっと大きな流れ、人間の営みも、自然の崩壊も、地球の公転も、太陽の熱も、銀河の成り立ちも、オレが落下しているということも全部同じだということ。 そうだな、言うなれば物理法則。 皆皆、物理法則に従って動いてる。 物理法則を無視して動くなんてできはしない。 今もこれからも物理法則に支配され続けるんだろうなぁ。 だからこのまま落下して、地面にぶつかって死んで、骨はバキバキに折れて、もしかしたら内臓が口から飛び出るかもしれない、そして葬式が開かれて燃やされて灰になって地面に埋められ、それから何年経つか判らないけど人類は滅びてオレの灰は土になるんだろう。 仕方がないんだ。 そういう風に理はできている。 この世は恐ろしいほど理に適っている。 だから全てを受け入れられるし、地面にぶつかったら痛いだろうなぁ、とも思うのだ。
by xtu_ltu9981
| 2010-03-30 11:30
| 徒然なる希望と絶望
|
カテゴリ
以前の記事
2010年 10月 2010年 09月 2010年 08月 2010年 07月 2010年 06月 2010年 05月 2010年 04月 2010年 03月 2010年 02月 2009年 12月 2009年 11月 2009年 10月 2009年 09月 2009年 08月 2009年 07月 2009年 06月 2009年 05月 2009年 04月 2009年 03月 2009年 02月 2009年 01月 2008年 12月 2008年 11月 2008年 10月 2008年 09月 2008年 08月 2008年 07月 2008年 06月 2008年 05月 2008年 04月 2008年 03月 2008年 01月 2007年 12月 2007年 11月 2007年 10月 2007年 09月 2007年 08月 2007年 07月 2007年 06月 2007年 05月 2007年 04月 2007年 03月 2007年 02月 2007年 01月 2006年 12月 2006年 11月 2006年 10月 お気に入りブログ
リンク
検索
タグ
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||